« 2006年8月 | トップページ | 2006年10月 »

2006年9月25日 (月)

フェルメールのクローゼット

2011年1月記事更新!それぞれの作品に解説を付け加えました。更新部分は最初の記事のあとです。とっても長くなりました。

Woman_with_a_pearl_necklace_03

フェルメールのクローゼットには、トルコ風の衣装など、民族を強調する服飾が用意されていたようです。

左から「真珠の首飾りの女」、「手紙を書く女」、「女と召使」では、同じものを着用しています。面白いですよね。よく、フェルメールの記事で、彼女たちの毛皮の模様を、英国王家に伝わる紋章の「アーミン柄」と引用されている方が多いようですが、英国はオランダにとって、当時は宿敵です。

追記
あまりにも紋章とお国柄にとらわれた書き方でした!でも嬉しいTBが!こちらのブログ記事「アーミンの縁どり 絵画作品から」を見てください!

Woman_with_a_pearl_necklace_03

アーミン柄は毛皮を図案化したもので、紋章学ではこれらも色彩の内に分類されるといいますが、その紋章というのが、英国なんです。アーミンは、テンの白い毛皮に尻尾が付いている様子を図案化したもの。ビロードにこの裏地の付いたローブが多いと思いますが、フェルメールのこの模様は、アーミンでは、決してあり得ません!というのが私。

Woman_with_a_pearl_necklace_03

紋章学からみて(全然詳しくないですけど)、毛皮模様であるFURS(ファーズ)から「ヴェア vair」と考えられますよね。リスですね。白地に青い斑点(紋章)が特徴なんです。また、人の精神状態では、「乱れた状態」を示すとも云われていますが、a‐Leiさんの記事から考えるに到ったのは、その寓意とドレスの共通性。

Woman_with_a_pearl_necklace_03

寓意から「「手紙を読む女」は、不倫の子を身ごもっているのかもしれない。」とあり、3人が、おなじヴェア柄を着用させているのも、何かフェルメールが暗示しているのかなぁと考えました。寓意・暗示など、図像学といいますよね。「フェルメールの小路」、「Allegory of Painting」で、図像学や図像解釈学に触れています。

Woman_with_a_pearl_necklace_03

さて、フェルメールが偏愛したといわれているウルトラマリンについで、このイエロー。KAFKAさんの「フェルメールのパレット」から、引用させていただくと、『リード・タン・イエローは、(フェルメールの)パレットの女王』とありました。KAFKAさんが、必ずしも絵画の色とは一致しないという断りがありますが、KAFKAさんが示した色は、この3人のカラー「リード・タン・イエロー」と思われます。

Woman_with_a_pearl_necklace_03

2011年1月31日更新→「XAI フェルメールはお好き?」から各記事をどうぞ。また、kei さんの記事からそのままコピぺさせてもらったけれど、この三作品のタイトル、そしてこの三作品の女性のドレスは同時代の画家も描いています。

フェルメール時代の巨匠たち
サミュエル・ファン・ホーホストラーテン  フェルメールの時代
ヘラルト・テル・ボルフ Gerard ter Borch II→ここに多い。


真珠の首飾りの女  ベルリン国立絵画館
Woman with a Pearl Necklace(Vrouw met parelsnoer) c. 1664
Staatliche Museen Preußischer Kulturbesitz, Gemäldegalerie, Berlin


Woman_with_a_pearl_necklace_2

1653年にカタリーナ・ボルネスと結婚したヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer, 1632-1675)の「真珠の首飾りの女」は、カタリーナの寝室に飾られていた絵です。

「絵画芸術(Allegory of Painting)」に描かれている女神「クレオ」はカタリーナをモデルという説もありますが、このく「真珠の首飾りの女」もそうなのかな?

シリ・ハストヴェットが「フェルメールの受胎告知」で、この作品を取り上げていたのは、図像や様式でそのよう見方ができると取り上げていましたが、先日maki さんの記事で、「水差しを持つ女」も「受胎告知」の図像や様式を備えていることを作例をあげて解説してました。

その受胎告知に取り上げられているものは、水差しと洗面器。真珠の首飾りでは、水差しのかわりにオランダの貿易を象徴するような中国陶器(クラークポーセレン kraak porcelain)の蓋つきの水瓶、洗面器のかわりに手洗いの鉢が置かれているテーブル。

Woman_with_a_pearl_necklace1

そして「水差しを持つ女」と共通するのが「リボン」と「身繕いの場面」、「真珠」です。このこの真珠の首飾りは「天秤を持つ女」と「手紙を書く女」にも描かれてます。

ここにだけ描かれているのが象牙のパウダーブラシ。

16世紀から17世紀にかけてネーデルランドやフランドルではヴァニタス( Vanitas 虚栄).が主題に描かれていましたが、象牙を骨類と考えるて髑髏と置き換えるとそういう寓意が潜んでいるというのもありとsai さんが情報を提供してくれました。

maki さんは「水差しを持つ女」で、水差しと洗面器を持つ召使と鏡に向かって身繕いをする女主人が描かれている、テル・ボルフの「身繕い(身支度)」の作品画像をあげていました。

Woman_with_a_pearl_necklace2

先のリンクした記事ヘラルト・テル・ボルフ Gerard ter Borch IIにも同じ作品が掲載されているほか、この作品も!と思えるものがいっぱい。

私は所蔵先がいっしょのフランス・ファン・ミーリス(Frans van Mieris)の「鏡の前の若い女性」(Young Lady Befor a Mirror c. 1662-65 Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie, Berlin)を引用したいとおもいます。

下の作品ですが、ごらんのとおり鏡を見る位置が「真珠の首飾り」と同じように離れた位置に女性は描かれている。不思議って思ったのは、実際につけたあとは遠めで見ますが、「真珠の首飾り」はつけるときに離れすぎた位置に描かれているなと感じていました。

フランス・ファン・ミーリスの作品に、「真珠の首飾り」で描かれている椅子の生地に似たテーブルクロス、そして身に着けているカラーは違いますが毛皮の縁取りがあるプルオーバーが椅子に掛けられています。

Young_lady_befor_a_mirror

そして髪にはブルーのリボン。「真珠の首飾り」では、珊瑚の色に変わっていますがそっくりです。これは私の発見!そして召使が宝石箱を手にしています。きっと真珠の首飾り。

もともと「手紙を読む青衣の女」と同じ図式を思い描いていたようで、消された世界地図に、手前の椅子のリュートも消してしたったようです。

「青衣の女」と比べると、奥の椅子のところまで描かれていたものが、「真珠の首飾り」では、鏡と窓がある壁が描かれ奥行きはひろがった。

そこには白い壁。神聖な印象を受けるのはきっとこの神秘的な空間だからかな。


手紙を書く女  ロンドン・ナショナル・ギャラリー
A Lady Writing (Schrijvend meisje) c. 1665-1666
The National Gallery of Art, Washington D.C.


A_lady_writing_c_1665

リボンがつけすぎだというwanko さん。「フェルメール 残念・・・ 」で、残念な顔に選ばれた。・・・覚えておくよ!

この「手紙を書く女」の引用したい作品はいっぱいある。やっぱり「ヘラルト・テル・ボルフ Gerard ter Borch II」から。

マウリッツハイツ美術館、ウィーン美術史美術館所蔵に制作年数が異なる同じ作品の「手紙を書く女」がよく引用されていると書いてあった。

私はハブリエル・メツー(Gabriel Metsu)の「手紙を書く男」を思い出したのだけど、aleiさんの記事から。そこで同じハブリエル・メツーの作品から1枚。

A_woman_writing_a_letter_gabriel_me

ハブリエル・メツー(Gabriel Metsu)の「手紙を書く女 A Woman Writing a Letter」(c. 1662-1664)を引用してみました。フェルメールと同じく顔をこちらに向けてる。フェルメールは顔だけだけれど、この女性は上半身から向けているけど、手紙を書く角度はとても似ていると思ったのです。

フェルメールは無地だけれど、重厚そうなテーブルクロスに羽ペン。

フェルメールが描いた「手紙を書く女」には、宝石箱のようなものや封蝋やインク壷などが入っていそうな小箱が描かれ、テーブルの手前には、黄色いリボンで結ぶ「真珠の首飾り」が描かれている。

ハブリエル・メツーの描いたテーブルには、インクをつけようとしているペンたてのようなものと手紙そのものだけ。足元には当時の画家たちが描いたエスパニア犬がいる。フェルメールは一切人間以外の生き物は描いていないのが不思議だな。

A_lady_writing4

テル・ボルフもハブリエル・メツーも、テーブルには手紙に必要なものしか描いていないのに、、フェルメールはそれ以外のものを寓意的なのか描きこんでいて、作品全体はとってもシンプルなのに、テーブルは別。

彼女が座る椅子は、「窓辺で手紙を読む女」や「手紙を読む青衣の女」と同じライオンヘッドの椅子。

シガー愛好家のフロイトは「Sometimes a cigar is just a cigar」と心理的な言及から出た言葉があります。「時には葉巻はただ葉巻にしか過ぎないこともある」という意味。

フェルメールの海外サイト「essential vermee」で、「a chair may sometime be just a chair」とあって、どういう比喩で使ってるのかって思ってメール。フェルメールにとって「椅子は万事が椅子である」っていう意訳ありじゃない?というのがsai さんからの情報でした。

A_lady_writing2

wanko さんったらリボンに目が向いたようだけど、私は大きな真珠の耳飾に驚いた。この首飾りと真珠の耳飾はフェルメール一家の資産に入っていたのかなと思うと、困窮したフェルメールの晩年が信じられない。

楓さんからこの髪型はシニヨンで、リボンを星型に結んでいるとっても貴重な髪型の資料だよって言ってました。

このスタイルは17世紀前半に流行ったようで、フェルメールの作品だけではなく、テル・ボルフもハブリエル・メツーもフランス・ファン・ミーリスも描いている毛皮つきのジャケットやドレスの膨らみのある当時は、頭部が小さくなる方がバランスがよかったかららしいのです。

この「手紙を書く女」もフェルメールの妻カタリーナという説があるようです。

A_lady_writing5

さてさてわたしは、ほかにない解説を求めて、文中にも登場しているsai さんや楓さんに何をどういう風に調べたらいいかお尋ねしたのは、maximum さんが「フェルメール 二人の紳士と女、紳士とワインを飲む女、稽古の中断」の記事を書くにあたり、ブログ仲間にメールで情報収集していたことを知って。(なぜかわたしにまで・・・、お役に立てないわたし。)

アーミン柄はたとえアーミン柄だとしても、とっても不思議だったから書けたけれど、フェルメールの作品事自体を解説するには未熟。それでわたしもすぐに情報収集。alei さんがこの作品の画中画について、これは「メメント・モリ(死を忘れるな)」を示唆していると思うという情報をもらえました。

この背景に描かれているのは楽器のベース・ヴァイオル(バス・ド・ヴィオール)とも呼ばれたヴィオラ・ダ・ガンバと頭蓋骨らしいという説があるそうです。「真珠の首飾りの女」にはsai さんからの情報で、象牙を骨類と見做すなら髑髏が意味するヴァニタス( Vanitas 虚栄).だと先に書きました。

Skull

このヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘームの「ヴァニタス」の雰囲気に似てる。もしかすると「手紙を書く女」の頭部を「頭蓋骨」に見立てるつもりだったかも。

ここではフェルメールの死生観「メメント・モリ(死を忘れるな)」を教訓的に、また17世紀のオランダで、プロテスタント教会が宗教画を禁止したことがあって、画家たちは風俗画や静物画で「メメント・モリ(死を忘れるな)」、「ヴァニタス( Vanitas 虚栄).」(→誰か書いてたよね)、「五感の寓意」をさかんに描いたということです。

そういえばそうだった。わたしは、このフェルメールの画中画はヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム(Jan Davidszoon de Heem)のヴァニタス(Vanitas)」(Still-life with Books and Skull 1629)に似てるなーと。楽器は「書物の静物画」( Still-Life of Books 1628)の方には描かれてたけど。


女と召使  フリック・コレクション
Mistress and Maid(Dame en dienstbode) c. 1666-1667
The Frick Collection, New York


The_frick_collection2

一般的にアーミン柄とされている「ヴェア vair」のアーミン柄風なトリミングのついたジャケットは、カタリーナがモデルではないかという説の2枚とは違って、背景が無地。そして髪型も違います。

英訳では「愛人と召使」になる「女と召使」は、そうした種類の女性をあらわすために背景をレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの愛妾だったチェチーリア・ガッレラーニを描いたように同じ無地にしたのかと。

Mistress

1672年にフェルメールはイタリア絵画の鑑定することになりました。ということは、イタリア絵画に詳しかったということでは。

左がチャルトリスキ美術館(クラクフ)所蔵の「白貂を抱く貴婦人」(1490年頃)、右がルーヴル美術館所蔵の「ミラノの貴婦人の肖像」(1490-96年)で、チェチーリア・ガッレラーニの肖像画。ボッティチェッリもメディチ家ジュリアーノの愛人「シモネッタ・ヴェスプッチ」を描いていた1枚は無地の背景。

The_frick_collection5

正直、愛人より綺麗な顔立ちに見える召使の女性。フェルメールの「手紙を書く女と召使」の女性と同じなのかもしれないけど、顔の描き方がちょっと違う。髪の分け目がはっきり描かれて、フェルメール特有の顔立ちの「手紙を書く女と召使」。

Ryo-さんの「手紙を書く女と召使」の衣装が、ハブリエル・メツーの「手紙を読む女」と同じだとあった。本当だ!じゃ、この「女と召使」はというと。

The_cook

ハブリエル・メツーのティッセン・ボルネミッサ美術館にある「料理女」(1657-62)にそっくり。

サミュエル・ファン・ホーホストラーテンのモチーフを取り入れたフェルメールの「恋文」 (ラヴレター)は、「女と召使」の二人が描かれていると思う、女主人も召使も同じ服で、顔もそこそこ似てる。

The_frick_collection3_2

そしてフェルメールは召使と女主人の立場をはっきり区別して書いているの。相変わらずアーミン風の「ヴェア vair」のトリミングのジャケットで、富裕層の市民のファッションに、「真珠の首飾り」、「手紙を書く女」の身持ちのよい女性のヘアスタイルではなく、最新のヘアスタイル(1660年以降)で描かれているでしょう。

彼女たちの背後には描ききっていなかったといわれるカーテン、そしてこの「愛人」のヘアスタイルも、他の作品の髪の描き方と比べて、描ききれなかった感じがする。ポワンティエを使ってキラキラしてないもん。

Gerard_ter_borch

そして先に書いたけれど、召使と女主人はmakiさんが「水差しを持つ女」での朝の身支度の場面で、テル・ボルフの「鏡の前の女」(1650)を引用していたけど、この暗い背景に黄色のドレスの女性が女主人のようで、立っている二人は背景に同化しちゃているけど、立ち姿と座る女性の位置関係や視線は、フェルメールは「女と召使」に取り入れたと思う。

The_frick_collection4

このペンや封蝋なんかを入れる小箱やインク壷みたいな小物は「手紙を書く女」と同じ。あとで気がついたんだけど、インク壷のようなもの、ハブリエル・メツーの「手紙を書く男」(1662-65)の机の置物と同じなのです。位置を変えただけ。

フェルメールは、絵が下手だったのかもしれません。いろんな作例から、時間をかけて丁寧に丁寧に仕上げることができる。だから注文に間に合わないこともあり、仕上げるまで長すぎてそれで作品数少ないんじゃないかと。

今回の更新部分は一人じゃ、ここまで気がつかなかったことが多く、みなさまありがとうございました。

| | トラックバック (3)

2006年9月11日 (月)

フレデリック・クレマン 一枚の写真

Ayako2

Art de Vivreで紹介された、フレデリック・クレマン「眠れる美女」の装飾本を開けば、オブジェ、古い絵の切れ端と、官能に満ちた眠れる美女 (by ayako)のフォトグラフが登場。


フレデリック・クレマンの本 関連記事
眠れる美女 (Art de Vivre)/九月九日 重陽 眠れる美女から
フレデリック・クレマンの猫フレデリック・クレマン Museum から
フレデリック・クレマン 千一夜物語 「荷かつぎ人足と乙女たちとの物語 」
フレデリック ・クレマン  「アリスの不思議なお店 」

| | トラックバック (2)

« 2006年8月 | トップページ | 2006年10月 »